ちびわぎ

わぎは突然やってきた。

行きつけの整骨院の患者さんが「庭で生まれちゃった野良猫の貰い手を探して」と、なんと整骨院に子猫を持ってきちゃった。


で、整骨院も病院なので、さすがに猫は置いとけないってことで、すぐ近所でジーンズ屋をやっていた私が店で預かることに。


昼間は店、夜はうち、が数日続いたが、やはり貰い手なし。


「うちのアパート、動物禁止なんですよね~」と言い続けたものの、もはや誰も聞いてない。


「猫飼ったことないし~」の訴えも無駄。


悩む余地なく、当然のこととして、やつはうちに居候することになった。


何が困るって、野良だったもんで、やっと目が開いた手のひらサイズだったにもかかわらず、人に馴れてない。


ケージを開けるだけで「シャーッ!」とか「フーッ!」とか、顔全部を口にしていっちょまえに威嚇する。


更に、夜鳴き疳の虫のすさまじいこと…(T_T)


動物禁止なんだから静かにして!なんて聞く訳もなく、連れて帰った瞬間から午前4時まで


 「ピャー…ピャー…ピャー…ピャー…」


文字通り休みなく、一定の間隔で、ずーーーーーっと鳴いてる。


 午前4時まで休みなく、だ。


声が響いたらバレちゃうので、なんとかカモフラージュしなくちゃと、でも何の手だても思いつかず。


暫く考えて、閃いたのが、何故か「レゲエのテープを延々掛け続ける」だった…。甚だしく猿知恵。


 ンッチャカ♪ンッチャカ♪ンッチャカ♪ンッチャカ♪


そんなこと、3日もやってりゃいい加減、気が狂いそうになってくる。


だって毎晩


 ンッチャカ♪ピャー…、ンッチャカ♪ピャー…、


ですよ。


5日目。


このサイズの体から、どうしてこんな大きな声出るの?あんた、セミですか?レベルの鳴き声。一向に止まず。


バレたら追い出されるドキドキと、耳をつんざく鳴き声に、さすがに寝られるはずもなく、7日を過ぎる頃には私のお腹も壊れ、身も心もげっそりだった。


「何とか馴れてくれ!そうしないと飼えないよ!」となだめ続け。


でもヤツは、どっからそのパワー沸いてくるの?と感心するほど、元気で鳴き続け。


11日目。


ぐったり疲れて家に連れて帰って猫を見て。


「もう無理だ。これじゃこっちが参っちゃう。飼えないや…」と言い、「明日獣医さんのところにでも貰い手探しお願いしよう」と決心したその日、ヤツはぴったり鳴かなかった。


そして初めて登ってきた膝の上で、そのまま寝た。


 …(T_T) じ~ん…感動…


心が通じた瞬間だった…わけじゃないよ、全っ然!

この感動は頑張った私自身へのねぎらいだよ。ほんっっっとに苦労したよ、このクソ頑固猫!


まさに


 …勝った…!!!!!


だよ。


今じゃ、あんた犬ですか?くらいベッタベタ。


だったら最初から抵抗すんじゃないよっ!ったくもう(-.-)


画像はやっと馴れて、ドラマーになるべく修行を開始したちびわぎ。

(おもちゃが何もなかっただけっす…。)